「アマゾンの反トラスト法のパラドックス」 パートI A.略奪的価格設定 (5)

A. 略奪的価格設定

　20世紀半ばまで、議会は略奪的価格設定をターゲットにした法律を繰り返し制定してきた。議会と州議会は、略奪的価格設定を、資本の豊富な企業がライバルを破産させ、競争を破壊するために使用する戦術、言い換えれば、支配に集中するためのツールと見なしていた。略奪的価格設定を禁止する法律は、権力と機会を分配しようとする価格設定法のより大きな取り決めの一部だった。しかしながら、1960年代の物議を醸した最高裁判所の判決は、評論家が政権を攻撃するための入り口を作った。この知的反発は、1990年代初頭までに、制限的な「回収テスト」の形で最高裁判所の教義に巻き込まれた。

　アメリカで最も初期の略奪的価格設定事件は、1911年にアメリカ連邦最高裁でのスタンダード・オイル社に対する政府の反トラスト訴訟だった。イーダ・ターベル氏の出版物『スタンダード・オイルの歴史 （The History of the Standard Oil Company）』に詳述されているように、スタンダード・オイルは、ライバルを市場から追い出すために、定期的に価格を引き下げていった。さらに、それはどちらでも同社を助けた。スタンダード・オイルは、競合他社に直面していない市場では独占価格を課したし、ライバルが優位性を確認した市場では、彼らを追い出すために価格を大幅に下げることにした。同社に対する反トラスト訴訟において、政府は、略奪的価格設定を含むスタンダード・オイルによる一連の慣行がシャーマン法の第2条に違反していると主張した。連邦最高裁は政府を裁定し、同社の解散を命じた。 その後の裁判所は、独占力の探求において、「値下げはおそらく大企業の最も効果的な武器になる」と立証する決定を引用した。

　スタンダード・オイルによって実行された略奪的価格設定の脅威を認識して、議会はそのような行為を禁止する一連の法律を可決した。1914年、議会はシャーマン法を強化するためにクレイトン法を制定し、価格差別と略奪的価格設定を抑制する規定を盛り込んだ。ハウスレポートによると、クレイトン法の第2条は、大企業が「競合他社の事業を破壊し、不採算にすること」を目的として、そして「差別的な価格が設定されている特定の地域または業界で独占を獲得すること」を目的として、生産コスト (原価) を下回る略奪的価格を設定することを禁止すると明確に示されている。